卸売市場流通についての諸問題

市場流通ジャーナリスト浅沼進の記事です

卸・仲卸の垣根

改正市場法によって、卸と仲卸の垣根は無くなりますが、この垣根は、正確に言えば改正市場法によって無くなったのではありません。
現行市場法が、受託と買付、せりと相対をフリーにし、手数料率の自由化を導入した時点で無くなったのです。
卸と仲卸の垣根は低くなったのではなく、理論上は垣根そのものがなくなったのです。

現行市場法は、国が定めた条件で取引を行わなければならないという規制法です。
そして、その国が定めた条件が受託・せり原則であり法定の手数料制度です。

なぜこうした規制を法律の根幹にすえたのかは長くなるので省略しますが、行政が責任を持って市場整備を行うが規制もするという、保護と規制が市場法の根幹なのです。

このため、卸は「自己の計算による卸売り」が禁止され、集荷は法定の手数料以外は収受してはならない、販売は仲卸と認可された買参人以外は売ってはいけないという制限を設けたのです。

この制限が維持されたのは卸、仲卸共に儲かったからです。
しかし儲からなくなった。手数料業者として厳しく規制してきた行政も「護送船団方式から業者責任主義へ」という虫のいいスローガンで、「儲けてはいけない」手数料業者から「儲けることが企業責任」の差益業者へと転換が求められ、その手段として例外規定による規制緩和がなされました。

しかし、規制緩和には保護の縮小がもれなく付いてきます。
差益業者への転換を求められたときから,卸と仲卸の垣根(法的規制)は無くなったのです。儲けなさいといいながら、仕入れ先や売り先を行政として規制することは論理の矛盾です。

直荷と第三者販売の禁止は規制法の根幹ですから、この部分を例外規定で対応することは無理があったと言わざるを得ません。
現行市場法と改正市場法が別物であるということはハッキリしています。

ただし、完全な自由主義経済の鍋の中に放り込むということではありません。
「公共性」というあまりハッキリしない基準が、改正市場法の中で重要性を増したのです。

現行市場法は、規制法として法全体が公共性を具現化していましたから、公共性と改めて強調する必要はなかったのですが、改正市場法は規制条文のほぼ全てを削除しましたので、行政関与を何らかの形で残さざるをえません。
そのキーワードが公共性なのです。

そして、その公共性とは、全市場の義務である業務規程を添付した認定申請の中に記載される共通ルールです。
特に取引条件と結果の公開は民間企業の理念とは相容れません。
お得意様によってサービスの質を変えることは客商売の常識です。